Share

第17話 大賢者、もっと癖になってる

Author: 瘴気領域
last update Petsa ng paglalathala: 2026-07-13 11:29:57

 ――虚無の谷

 それは、白骨の森を越え、氷壁に覆われた山脈の先にある。

 山脈には神話の時代から生きる黒竜が棲まう。

 山脈の向こうには、深い深い谷がある。

 伝説では、神々の争いによって大地が引き裂かれた跡なのだという。

 底の見えぬ断崖の先には、瘴気に汚染された荒野が広がる。

 人族はもちろん、魔物すら寄り付かない秘境である。

「なんでお前の師匠はそんなところに住んでいるんだ……」

「人間嫌いだったからなあ」

「度を越しているぞ」

「俺もそう思う」

 師匠は色んな意味で頭がおかしかった。

 貧民窟から俺を拾った理由もわからんし、その後の指導もおかしかった。

 俺が天才でなければついていけなかっただろう。

「つまり、俺が天才でよかったってことだ」

「突然何を言い出している」

 ミストがため息をついた。

「それはともかく、虚無の谷だと? すぐにキャラバンを組んで出発したとしても、何ヶ月かかるかわからんぞ」

「そうなんだよ。歩きや馬だと、行って帰ってくる間にメリスがパンクしかねない」

「それ以前に、無事に行き来できるかが問題だろうが。白骨の森を抜けるだけでも大仕事だ」

「あそこはねえ
Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App
Locked Chapter

Pinakabagong kabanata

  • 非モテ大賢者は美少女になりたかった ~わたぐるみに転生した結果、美少女にこねくり回される日々がはじまりました~   第71話 シロちゃんの休日(番外編)

     建国王により公爵位を授けられ、王国西方の安寧を任された偉大なる黒竜シュバルツ・ドラゴクロウ。その爪は山をも削り、その牙はミスリルさえも噛み砕く。一度ブレスを吹けば、地平線まで焼け野原となる――という千年前の伝説の存在だ。 何百年も人里に姿を現した記録がなく、歴史学者の中でさえ架空の存在だと断ずるものさえいた。そんな黒竜公の娘だという人物(?)が王都に現れた。 その名をシロ・ドラゴクロウ。銀糸の如き髪を持ち、肌は最高級の白磁を思わせる華奢な少女だ。だが、見た目に騙されてはいけない。自身よりも長大な戦棍を自在に振るう怪力は、その身に竜の力を宿していることの証である。 ……あと、面倒くさいことが起きると本当に竜になって飛び去ってしまう。王都の上空を白銀の竜が舞ったときにはそれはもう大騒動となった。 そのシロは冒険者として活動している。《大賢者》にして《凶獣》セージが率い、《金色幼女》メリスと《銀竜嬢》シロの三人で構成される冒険者パーティ《落ち着きがない》はいまや冒険者たちの畏怖を集める存在であった。 今回は、そのシロの休日を紹介しよう。【午前11:00】 宿屋で目覚める。 アキバ遺跡の探索成功にはじまり、数々の高難度クエストを達成した金級冒険者であるシロはお金持ちである。朝からあくせく働くつもりなどない。日が高くなり、空気がぬるんでからベッドを抜け出すのが習慣である。 髪を適当に手ぐしで整える。 乱暴な手入れだが、それだけで腰まで伸びた長髪がまっすぐに伸びる。宿からもらったお湯でざぶざぶと顔を洗うと、柳の房楊枝で歯を磨く。毎日の風呂は欠かさないが、朝の支度はじつに手抜きである。 寝間着を脱いで、着替えに袖を通す。 やたらに白いフリルやレースのついた黒い衣装だ。アキバ探索以前はメイド服がお気に入りだったが、メイドゴーレムが着ているのを見て何やら思うところがあったらしい。いまはアキバから流入してきた新しいファッションである『ゴシックロリータ』を愛用している。【午前11:30】 宿屋の1階にある食堂で軽く腹を満たす。 正午を回ると混み合うので、それより早い時間を狙っている。 今日のメニューはベーコンエッグとウインナー、ツナサラダという簡単なものだ。平皿に盛り付けた白いご飯に、それらを慎重に並べる。おっ

  • 非モテ大賢者は美少女になりたかった ~わたぐるみに転生した結果、美少女にこねくり回される日々がはじまりました~   第70話 エピローグ③

    「ええー、というわけで本日は墓参り兼、青空バーベキュー大会となります」 ドンドンパフパフーと俺はオプション装備したラッパやらタンバリンやらを打ち鳴らした。「おい、ちょっと待て。そんな話は聞いてないぞ」「うん、言ってないからな」 丸メガネをくいっと中指で持ち上げ、眉間にシワを寄せているのはミストである。「さすがにお墓でバーベキューっていうのは不謹慎なんじゃないかなあ」「墓で眠ってる当人たちが納得してりゃ問題ないだろ」「うーん、そう言われたら、別にボクも反対ってわけじゃないんだけど」 黄色いアホ毛を風に揺らし、首を傾げているのはツカサである。「バーベキューだなッ! オレの正義の炎で燃やし尽くしてやるぜッ!」「炭への着火だけ頼むわ」 事情もわからず拳を握り締めているのはヒロトである。 こいつに料理をさせると文字通りすべてが灰燼と化すから絶対に任せられない。百年前の旅でも、ヒロトだけは絶対に料理当番をさせなかった。「ヒツジ先生ー、シロちゃん連れてきたー」「……バーベキュー、はじめて」 メリスちゃんが金色のゆるふわヘアーに風をはらませて駆けてくる。手を引かれてやってくるのは銀色のさらさらヘアーを風にたなびかせるシロちゃんだ。うふふ、絵になるね。映魔機を回しっぱなしにしていた甲斐があるというものだ。「おい、ヒツジ野郎。あーしらも来てやったぞ」「姐御ぉ、こんなやつに義理立てする必要あるんすかね?」 ピュイが率いるハーピーチーム、魔土怒羅権も舞い降りてくる。 きっかけはメリスちゃんが気まぐれにエサをあげたことだったのに、気がつけば結構長い付き合いになっていた。ミストの地上帆船が量産に入ったこともあり、王国は魔物として認定していたハーピーたちを国民として組み入れようと働きかけているところらしい。 ピュイはその端緒となったハーピーとして、王国に属したハーピーの代表ポジションに収まっているようだ。本人曰く「このまま全国制覇してやるぜ!」ということだが、ちょっと意味がわからない。「墓場でバーベキューとはのう。相変わらず常識のないやつじゃ」「おっ、降ろしてくださいにゃ! 吾輩は高いところが苦手なんですにゃ!」「む、そういえばはじめて拉致……共に旅をしたクロネコ族もそんなことを言っておったのう」「拉致!? いま拉致って言った

  • 非モテ大賢者は美少女になりたかった ~わたぐるみに転生した結果、美少女にこねくり回される日々がはじまりました~   第69話 エピローグ②

    「着いたぜ。じゃあな、ヒツジ野郎」「ちょっ、投げるなよっ!?」 俺は青空から乱暴に放り捨てられた。 いやあ、落下ダメージ無視な身体だけどさあ。さすがに扱いが雑すぎませんかね? 俺はむいっと力を込め、全身をぼふっと膨らませる。 風をはらんでタンポポの綿毛のごとく宙を漂うと、ミストの研究室の窓ガラスにべたっと張り付いた。「よう、ミスト。開けてくれー」「お前はいい加減ドアから来ることをおぼえろ」 ミストが黒髪をかきながら、呆れた様子で窓を開ける。 俺はきゅっと身体を縮めて、ミストの研究室へ転がり込んだ。「相変わらず元気そうじゃのう」「師匠こそ変わってねえなあ。たまにはカラーリングでも変えてみたらどうだ?」「お主の目は節穴か? ほれ、脚部パーツの装甲の素材を一新したのじゃ」「さ、さっぱりわかんねえ……」 謎の薬剤と謎の骨格標本でいっぱいだったミストの研究室には、半機械の等身大人形――またの名を師匠という――が増えていた。アキバ遺跡から回収できた技術を研究するために、引きこもりをやめて王都に出てきたのだ。 円環の内側の創立メンバーのひとりであり、伝説の《黒鉄の魔女》であるという名声を活かして学院の名誉教授にすんなり収まっている。隠者気取りのくせになかなか生き汚いところがあるのが我が師匠だ。「それで、今日は何の用だ?」 俺はどんぐりの蹄でとてとてと歩き、ソファに座って要件を尋ねる。 どうせ魔力操作関連だろうとは思うのだが、呼び出されるたびに突飛な実験に付き合わされるので具体的な内容は予想もつかない。「うむ、その前に確認したいのだが……セージ、お前は人間の体に戻りたいか?」「人間の体に?」 ミストから問われ、俺は思わず考え込んでしまった。 ヒツジさんボディで過ごすこと2年弱。あまりにも馴染んでしまってもはや人間の体だった頃の感覚が思い出せない。メシも食えるし、伸縮自在だし、怪我もしないし……。アキバ遺跡から回収した魔石で寿命の問題も解決したし、ぶっちゃけこの身体のままの方が便利なんじゃないかと思うところもある。「うーん、ぶっちゃけわからん。もはや人間だった頃が思い出せん」「結婚したいとか、こ、子を成したいなどとは思わないのか?」 なぜかミストが頬を赤らめながら聞いてくる。 その様子になぜか俺までドギマギし

  • 非モテ大賢者は美少女になりたかった ~わたぐるみに転生した結果、美少女にこねくり回される日々がはじまりました~   第68話 エピローグ①

     およそ1年後。王都の壁外にて。「カカカカッ! この《大魔王》セージ様に楯突こうというのか!」「《凶獣》セージが現れたなっ! みんなっ、かかれー!」「「「わぁー!」」」「うぎゃー!」 俺は手に手に棒を持った貧民窟のガキどもに追われていた。 ヒツジさんボディはいくらぶん殴っても怪我しないもんだから全員遠慮なしだ。まったく、ガキってのは加減しないから困る。まっ、俺は1発も喰らわないけどな。「ヒツジ先生ー、ごはんできたよー」「おっ、メリスちゃんありがとう。おらっ、ガキども! 冒険者ごっこは終わりだ。メシ食いに行くぞ!」「「「わーい!」」」 メリスちゃんが作った羊肉のスープに、欠食児童どもが群がる。 え、えと、メリスちゃん? ここで羊肉を使ってることに他意はないよね……?「さあ、みんないっぱい食べるっす! いっぱい食べて、立派な悪の組織の戦闘員になるっすよ!」「くっくっくっ、孤児を幼少からみっちり育て上げてジャークダーの精鋭戦闘員に育て上げる。それがしが言うのもなんであるが、完璧な計画でござるよ」 木皿にスープをすくい、配膳しているのはマサヨシ君とサムライお姉さんの夫婦だ。 アキバとチョーダ王国の交易路が確立したら、アキバの守りを六鬼将のポンコツどもに任せて王都に引っ越してきた。名目は貧民窟のガキどもをジャークダーの引き込むことだが……どっからどう見てもボランティアのお兄さん、お姉さんである。 なお、戦闘員スーツを脱いだマサヨシ君は細マッチョの精悍な男であった。ろくに手入れもしていなそうな赤茶けたボサボサヘアーがワイルドな魅力を放つイケメンである。くそっ、爆発しねえかな。 1年前、俺たちがあの蛇野郎を撃破した後からが忙しかった。 亜空間とやらから2万人もの異世界人を助け出し、生活の基盤を整える手伝いをしなければならなかったのである。あのYADOBASHIビルには大量の物資が残されていたが、2万人で消費するとなると心もとない。あっちこっちに畑やら工場やらを作らせて、チョーダとの交易で経済が成り立つように整えなければならなかったのだ。「おい、ヒツジ野郎。ミストの姐さんが呼んでっぞ」「ハッ! 俺がハーピー如きに捕まえられると思ったか!」「ったく相変わらずめんどくせえな……。メリスの嬢ちゃん、頼むよ」「わかったー

  • 非モテ大賢者は美少女になりたかった ~わたぐるみに転生した結果、美少女にこねくり回される日々がはじまりました~   第67話 大賢者、高笑いする

    『いい加減にしろォォォオオオ!!』 蛇野郎の叫びとともに、やつの身体が一気に膨張する。 大人の腰よりも太い大蛇の群れが絡まりながらうねり、爆発したかのように暴れまわった。床が、天井が、柱が砕け、弾ける。サムライお姉さん戦の時点ですでにひどい有様だったが、いまや瓦礫置き場の様相を呈している。その中心には、伝説の九頭竜を思わせる巨大な姿に変じた蛇野郎がいた。 蛇野郎が、九つの首を無秩序に振り回す。ヒロト、ツカサ、シロちゃんの三人は直前にぱっと飛び退き、すんでのところで大蛇の奔流をかわした。「巨大化なら慣れてるぜッ!」「まあ、毎度のパターンだよね」 ヒロトとツカサは慌てるでもなく、ヒットアンドウェイで大蛇に打撃を加える。 だが、先程までと違って蛇野郎に苦しむ様子はない。デカくなったぶん、防御力も増しているようだ。「……んっ!」 二人が攻めあぐねているところに、シロちゃんが満身の力を込めた打撃で割って入る。特注のメイスが黒い鱗に食い込むが、鱗一枚砕けずに弾き返される。シロちゃんのフルパワーであの様子だと、物理はもう通りそうにないな。「それがしの刀であれば……」「ちょっ、キルレインさん! 無理はダメっすよ!」 刀を杖にし、ふらふらと立ち上がろうとするサムライお姉さんをマサヨシ君が止める。 あゝ、仲良きことは美しきかな。夫婦でいちゃつくのは見えないところでお願いします。「怪我人にうろつかれるのはかえって邪魔だ。大人しくしていろ」「俺たち、一応勇者パーティなんて呼ばれてたんでね。役割分担はきっちりできてるわけよ」 ミストが懐から出したワンドに紫電を走らせる。 俺はヒツジさんトゥースをカカカカッと打ち鳴らす。 《魔封じ》はすでに解除済み。これからは火力担当、魔法使いチームの出番だぜ!「メリス君、牽制を頼めるか。何、あれだけ大きな的だ。外す心配はしなくていい」「わかったー! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》!!!!」 両手を前にかざしたメリスちゃんの周辺に無数の光球が生まれ、九頭竜と化した蛇野郎に向かって次々と撃ち出される。光球が黒い鱗を弾き飛ばし、肉をえぐり、血しぶきを発する。 ま、物理特化したら魔法に弱くなるのが

  • 非モテ大賢者は美少女になりたかった ~わたぐるみに転生した結果、美少女にこねくり回される日々がはじまりました~   第66話 大賢者、気合を入れる

    「貴様がキルレインを操っていた黒幕か!?」『黒幕とは人聞きの悪い。我が加護を与えてやっていたのだ』 ミストの問いかけに、絡みつく蛇が不気味に蠢いて応じた。 蛇体を震わせて音を発しているのだろう。人間のそれとはまったく異質な声。まるで小さな蛇が耳の中に潜り込んでくるようだ。「操り人形がいなくなったから本人登場って、完全に黒幕のムーブだよね」「お前からは悪の臭いがぷんぷんするぜッ!」 ヒロトとツカサが、ミストの前に出る。 さっきの黒い波動は溜めが必要なのだろう。べらべらとしゃべりはじめたのはやつも時間稼ぎのはずだ。この隙に俺もちょっと仕掛けをさせてもらうか。(ミスト、悪いけど少し魔法使うぞ)(こら、早まるな。もう少し様子を見ろ)(さっきのやつをまた連発されたらマズイだろ。だいじょうぶ、金属メイドから回収した分くらいしか魔力は使わないから)(くっ……本当だな?)(本当本当、それにあの蛇野郎のうしろにあるデカいのはまるっと魔石だ。あれを回収できればもう俺の寿命を気にする必要もない)(……仕方がない。わかった) ヒロトとツカサが蛇野郎の注意を引いている間に、俺はミストと小声で打ち合わせを済ませる。 俺はひさしぶりに本格的に魔力を練る。第一の仕掛けとして、やつのあの広範囲魔法をなんとかしなくちゃどうにもならん。「この街を千年守ってたとか言うけど、外は廃墟じゃん。どこが守ってたのさ?」『矮小な者どもには想像もつかぬことよ。千年前、いくつもの宇宙がひとつになった。我もそれに巻き込まれてな。次元の境界が入り乱れる中で、この世界に堕ちようとしているこの街を見つけたのだ』 俺とミストが作戦を立てているのを察したのだろう。ツカサが会話を繋いでくれる。「千年前……といえば降魔災害か?」『お前たちはそう呼んでいるらしいな。無数の世界が折り重なり合い、異なる因果律が無理やりまとめあげられた』「異なる因果律……魔法や、新たな月のことか?」『ほう、矮小なる者にしては察しがいい』 ミストの問いに、蛇野郎は全身をおかしげに震わせる。『あらゆる次元、あらゆる宇宙、遠き星々からすべてが集まった。貴様らが《神》や《悪魔》と呼ぶ存在もだ。知らぬ地に堕ちたやつらが相喰む様子は壮観であったぞ』「傍観者気取りか。どうせその争いに割って入れるだけの力がなか

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status